今回は、2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公であり、
日本実業界の父と呼ばれた渋沢栄一の言行録である「論語と算盤」です。
今回はこんな人を対象にしてます。
・『論語』を勉強してみたいと思っていた人
・ビジネスを起業したい人
「どう働き」、そして「どう生きるべきか」を明治期の資本主義草創期に駆け抜けた主人公の言葉から読み解き教えを会得していきます。
現在、日本は新型コロナウイルスの影響による混乱、そして、2020年は5Gが本格的にスタートするなど、我々の生活が大きく変わろうとしています。
激変の真っただ中にいる今だからこそ、古来から変わることのない道徳を学ぶことはとても意味があることです。今から約150年以上前、近代日本の創立者から教えを吸収しましょう。
処世と信条
「論語」と「算盤」は、はなはだ遠くて近いもの。
論語には我々が道徳の手本とすべき最も重要な教えが載っています。
士魂商才:侍の魂を持ちながら商人の才覚とを併せ持つ。
武士のような精神と商才がなければ、経済の上からも自滅を招くようになります。
世の中を渡っていくのは、とても難しいことですが、『論語』をよく読んで味わえば、大きなヒントが得られます。だから栄一は、普段から孔子の教えを尊敬し、信ずると同時に『論語』を社会で生きていくための絶対の教えとしています。
そして、徳川家康も尊敬しており、家康の遺訓も取り上げています。
神君遺訓:徳川家康が亡くなった時の教え(論語から引用し寄せ集めたもの)
「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし」
「及ばざるは過ぎたるより優れり」 など
欧米の科学も必要であるが、東洋古来の古いものの中に、捨てがたいものがあることを忘れてはならないと主張しています。
蟹穴主義:蟹は甲羅の大きさの穴を掘る。
・自分の身の丈に合った夢や生活を志し、得意な事ことで社会に貢献する。
・自分の分を超えて手を出してはいけない。
立志と学問
「千里の道も一歩から」。どんな場合も、些細なことを軽蔑することなく、勤勉に、忠実に、誠意を込めて完全にやり遂げようとすべきです。
【志を正しく立てるには?】
自分の能力に気づくまでにも時間がかかります。立志するタイミングとは向き不向きと長所短所を把握していなければなりません。
【どんな方法で社会貢献するか】
最初に志を立てるときに、もっとも慎重に考えをめぐらす必要があります。
その工夫として、自分の長所と短所を細かく比較考察し、そのもっとも得意とするところに向かって志を定めるのがよいと、言っています。
栄一は、「青年時代の見当違いなやる気で、肝心の修養すべき時期をまったく方向違いの仕事で無駄にしてしまった」と語っています。
志を立てようとする青年は、ぜひとも前の人間の失敗を教訓にするのが良いのです。
常識と習慣
成功に必要なのは常識と習慣
【常識とはどういうものか?】
常識の原則である「智・情・意」を兼ね備えること。
智:知恵 意志に知恵が乗らないといけない
知恵が発達していないと物事を見分ける能力に不足してしまう。
情:情愛 情愛がなければトラブルに巻き込まれる
一種の緩和剤で、何事も情が加わることによってバランスを保ち、人生の出来事に円満な解決を与えてくれる。
意:意思 意志がないと何もできない
動きやすい感情をコントロールするものは、強い意志より他にない。
強い意志のうえに、聡明な知恵を持ち、これを情愛で調和する。さらに3つをバランスよく配合していって、はじめて完全な常識となります。
・才能だけではだめで、道徳をきちんと勉強する。
・自分の得意不得意を見つける。
・自分のできることをきっちりとやり社会に放出していく。
仁義と富貴
よく集めて、よく使おう
お金は社会の力を表すための大切な道具です。よく集めて、よく使い、社会を活発にして、経済活動の成長を促すことを心がけます。
お金の本質を知っている人ならば、集める一方で、よく使うことも大事なのです。
人格と修養
栄一は、孔子、孟子を生涯の師といっています。
忠信孝弟を重視するのは権威ある人格の養成法だと信じているからです。
忠:良心的である
信:信頼を得る
孝弟:親や年長者をうやまうこと
仁:ものごとを健やかに育む
忠信孝弟を重視するのは、「仁」という最高の道徳を身につけるためです。また、社会に生きていくうえで一日も欠かせない条件なのです。
教育と情誼
青年はよい師匠に接して、自分を磨いていかなければならなりません。昔の学問と今の学問とを比較すると、昔は心の学問ばかりでした。
また、昔は読む書籍がどれも「自分の心を磨くこと」を説いていました。
仁:ものごとを健やかに育む
義:みんなのためを考える
礼:礼儀を身につける
智:ものごとの内実を見通す
信:信頼される
5つの道徳を押し広げていくことで、同情する心や恥の気持ちを人に抱かせ、礼儀やケジメ、勤勉で質素な生活を尊重するように教えたものでした。
ところが精神を磨くことを怠り、心の学問に力を尽くさないでいました。そのことが品性の面で青年たちに問題が出るようになってしまったのです。
成敗と運命
【良心と思いやりだけだ】
大いなる楽しみと喜びの気持ちを持って事業に携わっていれば、どんなに忙しく、いかに煩わしくても苦痛を感じることはありません。
愉快な気持ちから楽しみを発見し、さらに尽きない喜びを感じて事業を進めるエンジンにできます。
人道とは、何より良心と思いやりの気持ちを基盤にしています。仕事には誠実かつ一所懸命取り組みます。そして同時に、深い愛情が必要です。是非この良心と思いやりの道を身につけ、実際に行ってください。
自分ができることをすべてしたうえで、運命を待て
運命に対して、三つの態度で臨むべきです。
恭:礼儀正しくする
敬:うやまう
信:信頼する
そう信じてさえいれば、「人事を尽くして天命を待つ」ーー自分ができることをすべてしたうえで、天からくだされる運命を待つ。この言葉に含まれる本当の意義が、初めて完全に理解されるようになります。
多くの人は、ただ成功とか失敗とかだけを眼中に置いて、それよりももっと大切な「天地の道理」を見ていません。彼らは物事の本質をイノチとせず、カスのような金銭や財宝を魂としてしまっています。
人は、なすべきことの達成を心掛け、自分の責任を果たして、それに満足していかなければなりません。
まず、誠実に努力することです。そうすれば公平無私なお天道様は、必ずその人に幸福を授け、運命を開いていくよう仕向けてくれます。
成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋に沿って行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができます。
まとめ
日本実業界の父である渋沢栄一の「論語と算盤」は、今の現代でも変わらずに私たちの生活に
役に立つ教えばかりです。どんな時代でも変わらない古典の『論語』を学ぶ良い機会となります。
時間があるこの時期だからこそ、じっくりと読書をしてみるのもよいかもしれません。
すべてはあなた自身の知恵となるのですから。
参考図書
論語と算盤
渋沢栄一 (守屋 淳 訳)
その他
マンガ版論語と算盤